ダンシングハンカチの魅力はなんといってもシルクが生き物のように動き回るところだ。
手順が固まり、技術面での問題点をクリアした後、最後の壁はシルクの動き方、演者とシルクの関係といった表現面での課題だった。全体のストーリーとしては、次のようなイメージを思い浮かべた。
【パート1(起)】
・最初は演者がシルクを結んで、何か普通のマジックを始めようとする。
・すると結び目がひとりでに解けてしまう。演者は何か変だなと思う。
・演者はシルクの端を結び、人形のような形を作る。
・シルクをすっと端まで撫ぜていくと、ちょっと嫌がるようにシルクの端が少し跳ねる。
・さらに、シルクは手から手に飛び移る。
・演者は、このシルクを丁寧にたたんでシルクハットの中に入れてしまう。
・演者は大きな布を取り出し、ハットの口を完全に覆う。
【パート2(承)】
・演者は手に持った布を広げ、ハットの中のシルクに出てくるように合図する。
・シルクがピョンと布の縁に顔を出す。
・シルクは布の上で左右に動き出す。
・シルクは布の縁にそってゆっくり移動する。
・シルクはさらに加速して横に逃げようとする。演者の肘が引っ張られる。
・あわてて、演者は引き戻す。
・安心したのも束の間、再びシルクは横に逃げようとするので、演者はもう一度引き戻す。
・シルクは今度は演者の後ろの方に逃げていき、演者は身体を回転させながら追いかけていく。
・演者はシルクの上に布をかぶせてつかまえ、布の縁の上に乗せる。
【パート3(転)】
・シルクが突然、布の後ろに隠れる。
・演者が探すと、シルクは左肩の後ろから演者をからかうように姿を現す。
・シルクは肩から腕に沿って移動し、布の上に戻る。
・演者はシルクを布から肩の上に移動させる。
・演者が指示すると、シルクは肩から布の上に飛び移る。
・演者がシルクを床の上に落とすと、シルクは飛び跳ねて空中を浮遊する。
・演者は布でシルクをつかまえて、再び布の上に戻す。
・シルクが前方に逃げようとするので、演者は引き戻す。
・シルクが床の上に降り、踊り始める。演者も一緒に踊る。
・演者が指示すると、シルクは床から布に飛び移る。
【パート4(結)】
・シルクが腕の上をゆっくり移動する。
・シルクの動きがパタと止まる。
・演者が息を吹きかけると嬉しそうに動き出し、演者の首の周りにじゃれる。
・演者とシルクが一緒にバウ(礼)をして終わる。
演者とシルクの関係は、最初は演者が主導権を握っているが、途中からシルクに
主導権が移る。いろいろのやり取りの後、二人の関係は徐々に親密になっていく。
最後は仲の良い友だちになってハッピーエンドという形にした。
難しかったのは、演者がシルクに指示をする動作だった。両手がふさがっているので、
顔の動きだけで表現する必要がある。ここはなかなか思うように表現できなかった。
解説ビデオのショーン・ボグニア氏の動きやデビッド・カッパーフィールドのTVスペシャルでの演技を何度も見て研究した。
練習中は、客観的に自分の演技を見ることができないので、本番まで自信がなかったが、
発表会ビデオを見ると、一応表現できていたのでホッとした。
その他の表現力については、本番後の感想を書くときに改めて振り返ることにする。
次回は、本番直前の心理状態と、本番中の意識について書いてみたい。
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